1.婚姻の「実質的成立要件」の準拠法
(どこの国の法律で考えればいいのか)
日本の「国際私法」である「法の適用に関する通則法」では、婚姻成立のための「実質的成立要件」について、第24項第1項で以下のように定めています。
第ニ十四条 婚姻の成立は、各当事者につき、その本国法による。 |
つまり、「結婚する当事者それぞれの『本国法』に従って判断しなさい。」という規定です。(法律用語的に言い換えれば、「婚姻の『実質的成立要件』に関する『準拠法』は婚姻当事者それぞれの『本国法』である。」ということになります。)
ここで、「本国法」とは、当事者の本国において、その件について具体的に定めている法律のことを指します。
例えば、結婚の当事者の一方が日本人である場合を想定してみます。
日本で、「婚姻は何歳以上になればできる」といった「実質的成立要件」について定めているのは「民法」という法律です。
したがって、「日本人の婚姻の『実質的成立要件』に関する『準拠法』は『日本民法』である。」ということになります。
一方、結婚の当事者が在日コリアンである場合の「準拠法」はどうなるでしょうか。
当然、大韓民国国民であれば準拠法は「大韓民国民法(대한민국민법)」、朝鮮民主主義人民共和国国民であれば準拠法は「北朝鮮家族法」という法律になるわけです。
しかしながら、日本政府の現在の行政上の解釈としては、「最近北朝鮮から来日したことが明らかである等、当事者が明らかにその地域に属するものであるならば朝鮮民主主義人民共和国の法律を本国法とすべきであろう」としつつ、戦前から日本に居留する在日コリアンの方々及びその子孫である在日コリアンの方々については「その準拠法は原則として『韓国法』によるものと考えて処理する」としています。
つまり、日本の役所では、在日コリアンの皆様の婚姻の「実質的成立要件」に関する準拠法は原則として「大韓民国民法 (대한민국민법)」である・・・と考えて取り扱っていることになります。
2.「大韓民国民法 (대한민국민법)」に基づく婚姻の「実質的成立要件」の概要
(どんな条件を満たしていれば結婚できるのか)
上記のとおり、現在、在日コリアンの皆様の婚姻の「実質的成立要件」に関する準拠法としては原則として「大韓民国民法 (대한민국민법)」が適用されています 。
以下の表は、その概要について「日本民法」と対比してまとめたものです。
条 件 |
大韓民国民法 (대한민국민법) |
日本民法 |
婚姻適齢 |
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父母の同意 |
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重婚の禁止 |
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再婚禁止期間 |
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近親者間の婚姻制限 |
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上表より、婚姻の「実質的成立要件」に関する「大韓民国民法 (대한민국민법)」と「日本民法」の規定には共通(もしくは類似)している点が多いことがわかります。
★ただ、近年の傾向として、「大韓民国民法 (대한민국민법)」の相次ぐ改正に伴って徐々に相違点が増えつつあることも上表より見てとれます。
その具体的な例としては、「婚姻適齢」の変更(女性について従前の「満16歳以上」から「満18歳以上」に引き上げられた点)及び女性の「再婚禁止期間」の既定が廃止された点が挙げられます。
一方、婚姻の「実質的成立要件」に関する既定の中で、「大韓民国民法 (대한민국민법)」と「日本民法」の間においてもともと大きく相違しているのが「近親者間の婚姻制限」に関する既定です。
例えば、いとこ同士の結婚が可能かどうかについてみてみます。
いとこは「4親等の傍系血族」に該当しますので、上表より、日本民法では婚姻可能ですが、大韓民国民法では婚姻が禁止されていることがわかります。
つまり、在日コリアンの方はいとこ同士で結婚することはできないということになります。
このように、在日コリアンの方が結婚しようとする場合には、その条件を「大韓民国民法(대한민국민법)」に照らして確認する必要があります。
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